袴田事件無罪判決を受けての声明

 2024年9月26日静岡地方裁判所にて、袴田巌さんの再審判決が行われ、1966年に冤罪により不当に逮捕された袴田巌さんの無罪判決が言い渡された。第一次再審請求闘争、第二次再審請求闘争、そして今回の再審裁判を戦い抜いたすべての人に敬意を表したい。 

 しかしこのことを以って逮捕から58年間にわたり蹂躙されてきた袴田さんの人権が回復したことにはならない。いうまでもなく袴田さんの失われた時間と生活、またそれを支えてきた人たちの苦難の日々はもはや帰らない。冤罪が究極の権力犯罪であるといわれる所以である。

 冤罪は一度起きると取り返しがつかないことを改めて私たちは深く自らに刻み込まなければならない。

 これまで袴田さんの事件に対して多くの人が裁判闘争を支えてきたことは前述したとおりであるが、これらの裁判闘争を支えたのは支援者たちの憤りと共感だった。袴田さんはたまたま被害者の会社の従業員だから犯人に仕立て上げられたのではない。そこには袴田さんがボクサーだったことに対する当時の警察、検察等の差別意識と偏見があった。だからこそ、袴田さんの裁判闘争を多くのボクサーたちが支え続けた。このことはこの事件について考えるとき、私たちは絶対に忘れてはいけない。

 狭山事件で石川さんが冤罪で不当逮捕された背景には部落差別があったことと、今回の袴田さんの事件は決して無関係ではない。冤罪の後ろにはいつも差別と偏見があり、このことは一方で、冤罪事件は決して権力だけの問題ではないことを示している。この冤罪という忌むべき権力犯罪を許している土壌は私たちの社会にある。言い換えれば社会における差別・偏見を無視しては、冤罪は今後も再生産され続けることになる。

 改めて社会から、袴田さんとその周囲の人々の58年間を奪った冤罪の土壌となる差別・偏見を無くし、差別・被差別から解放された御同朋の社会への道を歩むことを、無罪判決の今日この日に改めて私たちはここに決意するものである。

2024年9月26日 同朋運動を続ける七者協議会

                   

              

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